腸が変われば脳も変わる~ストレスに強い性格になるには?
昔から子どものお腹の弱さには悩まされてきました。小学1年の時は毎朝お腹が痛いと訴え、集団登校から外れて途中でコンビニに立ち寄り、中学年になっても便秘やお腹のガスに悩まされ、中学生になっても、学校へ行こうとするとお腹が痛くなってきて、トイレに籠ることもしばしば...。
腸脳相関と言いますが、ストレスがあるからお腹が弱くなるのか、お腹が弱いからストレスにも耐えれないのかどちらなのでしょう。
1.弱気のマウスも腸内細菌を移植すると勇敢になる?
九州大学で行われた研究では、細菌を持たないマウスと、通常の環境で育てられた細菌を持っているマウスを比べた結果、無菌のマウスは通常マウスよりもストレス反応が高いことが分かりました。
ところが、元々無菌のマウスに細菌を移植した場合、不安行動が減った、という結果が出ました。
また無菌マウスにある種の細菌を入れた場合でもそれほど変化はなかったのに、別の種類の細菌を入れた場合は、通常環境下のマウスと同じになる、など、細菌の種類によって反応が変わるとこもわかりました。
このことから、無菌のマウスでも細菌を移植することによって通常のマウスと変わらなくなる、また、お腹の中に持っている腸内細菌の種類によって行動が変わって来る、ということになります。
参考)
腸内細菌学雑誌 31 23-32 2017 脳機能と腸内細菌叢 須藤信行 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/31/1/31_23/_pdf
以前からセロトニンが腸で作られているなど腸が大事な役割を持っていることは知られていましたが、腸は腸でも腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)が重要なカギを握っているのですね。
注)腸内細菌叢とは
ヒトや動物の腸内で一定のバランスを保ちながら共存している腸内細菌の集まりのこと (コトバンクより)
人の腸内には100兆個、1000種類以上の細菌がいる。
2.人間も腸内細菌移植をすると体質・性格が変わる?
移植はいつから行われているか
欧米では何十年も前から糞便微生物移植(腸内フローラ移植)の研究が進んできましたが、日本では2013年に大学病院などで臨床治験が始まりました。以下は日本の例ですが、
どうやって移植を行うのか
健康なドナーの提供した菌の入った菌液を大腸内視鏡あるいは腸カテーテルを使って腸に注入します。
どんな病気に有効か
潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、精神疾患(うつ病、躁うつ病、パニック障害など)、糖尿病(II型)、高血糖・脂質異常症、高血圧、アトピー・アレルギーなどの治療に使われます。
効果は
- 自閉症5歳男児の例→便通異常改善、目を合わせないなどの自閉症状改善
- IBS(過敏性腸症候群)48歳男性・44歳男性 →腸内フローラが多様に。精神面も改善。
- うつ40代女性・30代男性→メンタル面改善
など、効果が出る割合が高く、効果も早く現れるようです。
参考)腸内フローラ移植臨床研究会
気になるお値段は
保険は効かず、安い新車が1台買えるほどのお値段なようです。
効果が見込めるとは言え、すぐには決められないお値段ですよね。
3.他の腸疾患の治療法は?
IBSの場合、病院に行くと、まずは
- 生活習慣の改善
それでよくならない場合は
- 腸の運動を整える薬
- プロバイオティクス
- 便の水分バランスを調整する薬
- 止痢薬あるいは下剤
- 抗コリン薬
等の処方
それでもよくならない場合は
- 抗うつ薬(心理面が強いとき)
- 漢方薬・抗アレルギー薬(心理的ではない場合)
といった方法で治療が行われます。
参考)
過敏性腸症候群(IBS)ガイド|患者さんとご家族のためのガイド|日本消化器病学会ガイドライン
うちは、病院に行くほどではないと思ったので、お腹の不調で受診したことはないのですが、病院に行ってもまずは生活習慣を見直すことから始めるようです。
4.そもそもなぜ現代は腸の不調に関する病気が増えたのか
考えられる原因:
- 抗生物質の多用により耐性菌が現れ、よい菌も殺してしまった
- 加工食品などに含まれる保存料、人工甘味料などの影響
- 食物繊維・発酵食品を摂らなくなった
- ゲームやパソコンの影響で体を動かすことが減って腸の蠕動運動が起こりにくくなった
- 消化されにくいものを摂る機会が増えて、腸に長く残り、悪玉菌が増えた
- 家畜の飼育に使われている抗生物質
5.自分で健康な腸を取り戻すには
上記原因の反対のこと:
- 抗生物質をむやみに使わない
- 加工食品を多く取らない
- 食物繊維(野菜、穀物、豆、海藻)を摂る(ただしIBSの場合は悪化する恐れがあるので消化のいい食品を摂る)
- 適度に体を動かす
- なるべく安全な食品を買う
プラス
- ストレスを溜めないこと
- 良質の睡眠を取ること
を習慣にすることです。
現代では流通目的で加工食品も多くてなかなか体に悪いものを取り込まないようにするのは難しいのですが、できるだけ新鮮な食物繊維が豊富な野菜を買って、たとえ悪いものを取り込んだとしてもすぐに排除できるようにしたいです。
最後に
うちの子の場合も2歳で喘息で入院したことがあって、恐らく抗生物質を出されと思います。その時は抗生物質の弊害について何も知りませんでした。風邪をひいても発作が怖かったので、抗生物質を出してもらっていましたし、中耳炎にも何度かなっているので、子どものうちにかなり腸内環境にダメージを与えてしまったと思います。
私も元々お腹が強い方ではなく、旅行に行くとすぐに便秘になってしまいます。夜にお菓子を食べるともう次の日は消化不良でお腹が張るし...。強靭な腸を持って生まれたかったです。
腸内フローラ移植が研究されてもっと利用しやすくなればいいなと思います。
アメリカではさらに進化して、カプセルで健康な人の細菌を口から飲めるという試みがなされています。
カナダのアルバータ大学の教授たちがCDI患者(クロストリジウム・ディフィシル感染症という抗菌薬を使用することによって起こる大腸の炎症性下痢で、重症の場合は命も落とす)116人に必要な細菌だけを集めた経口カプセルを治験し、有効性を検証した、という報道が2017年にありました。
今後の医療の進化と本当に人の健康を考えた食品の普及を願います。